Hello world!nora3です。
この間の記事で、演技に向いているのは「環境の影響を受けやすい心身を持っている人」で、逆に人前で全然緊張しない人や、いつも自信満々な人はあんまり演技に向いていないんです、という話をしたんですが。
今日はこれに関してもう少し詳しく説明して、演技する人にとって大切なもう一つの「素質」というか「性分」についてお話してみようと思います。
「環境の影響を受けやすい心身を持っている人」が大勢の人達の前に出て演技をしようと思ったら、なにが起こるでしょうか?
そうです。緊張しますね。ド緊張で脈が超高速で打ち、手足が震えて喉はカラカラ、不安で不安でどうしようもなく、心配で心配で夜も眠れなくなります。もし運よく眠れたとしても、夢の中にまで舞台でセリフが飛んで頭が真っ白になった自分の可哀想な状況が超リアルな質感を伴って出てきたりします。
おそろしい。
さて、ここからが大事です。この「環境の影響を受けやすい心身を持っている人」は次にどんな行動に出るでしょう?考えてみてください。
そうです。台本をひっくり返してセリフを確認したり、自分の動きを再チェックしたり、衣装や小道具が全部揃っているか確かめたり、ありとあらゆる手段を駆使して、自分を安心させようとします。
実は、これが「俳優の仕事」なんですね。
「準備すること」が俳優の仕事のほとんど全てなんです。
実際、舞台なり映画やドラマのシーン撮影がスタートした時点で、俳優の仕事はほとんど終わっています。本番は、自分が長い時間と労力をかけて準備した「役」を「解き放つ」場であり、その「役」としてその場所にいるだけで、基本的には済んでしまいます。
特に珍しい例ではありません。スポーツや料理などと同じです。何年も練習を重ねて、その力を解き放つ場として大会や試合があります。試合のための準備は試合が始まる前に終わっています。料理を提供する時には料理は終わっているのです。本番当日の「がんばり」は当然必要で、俳優もスポーツ選手もコックもそこはもちろん怠りませんが、でも、どのような結果や記録や勝敗になるかは、本番の前の「準備」で既にある程度決まっています。
結果を左右するのは「準備」です。本番に至る長い助走期間をどう過ごすかが、勝敗を決します。
だから必要なんです。「充分な準備をしなければ安心できない心」が。「環境」に影響されやすく、「緊張」しやすく、「心配で安眠できない心」が。そういう心を持つ人は、充分すぎる「準備」が終わって初めて、安眠することができます。
人前で緊張しない人や、いつも自信満々な人に、こういう努力を期待することはできません。もちろん舞台に立つのならそれなりの努力や準備はするはずですが、でもそれは切実さに欠ける分、「充分な準備無しには恐くて人前に立てない人」がする準備の量と質には到底かないません。
そういう意味で、僕は「クラスの人気者」よりも「いつも教室の端っこにいる人」の方が演技に向いている、と思っています。もちろん一部の天才を除いて、ですが。
俳優、女優と言えば、大変華やかな職業のように思われていますが、その仕事の中身は思いのほか地味で地道なものです。観客もファンも芸能レポーターもいない、一人きりの自分の部屋や稽古場で、小さな積み木を一個一個崩れないように積み上げていくような作業を毎日毎晩続けるわけです。
それが俳優の仕事の中心であり、「演技をする」ということの中身、ということになります。
はい。本日これまで。