Hello world!nora3です。
前回は「水」のようなニュートラルな身体を手に入れよう、というお話をしました。
今回は、身体的準備④の「表現できる身体を手に入れる」について話を進めていきたいと思います。
ここまで、①「リラックスして」②「柔軟性に富んだ」③「ニュートラルな」身体が必要ですという話をしてきたんですが、そういう身体を使って結局何をするかというと、「表現」をするわけです。①〜③が揃ったとして、あと身体的にどんな準備をすれば、自分が思うような「表現」をすることできるでしょうか。ちょっと考えてみてください。
そうです。実際動かした時に「どうなのか」といった部分を準備しなくてはなりません。
具体的には「自分の思った通りに動くか」「表現したいことを表現できるか」「役の感情や目的や意志が動きに現れるか」「役の心や魂と身体が繋がっているか」というような、アウトプットの部分になります。
自分が「今しているつもりの動き」と「実際にやっている動き」の間に大きな差があってはいけません。全く同じとはなかなかいかなくても、なるべく少ない差異にとどめるべきです。
でも、これは本当に難しいんです。一般の人でも、ビデオカメラやスマホで撮った動画に自分の姿が映っているのを見て「え?俺っていつもこんな風に歩いてんの??」とか「私って、普段こんなに姿勢が悪いの・・・?」とか「俺の笑顔って、こんななの?あんまり笑わない方がいいかなあ」とか思ったことあるんじゃないでしょうか。声なんかでも「俺の声高っ!」とか「滑舌悪っ」とか多かれ少なかれあると思うんです。自分が思ってたのと違うってことですけど。
演じる人の場合は、この「自分が思ってたのと違う」ってのを、なるべく無くしていく必要があるんです。それはそうですよね。コックさんが料理を作って「自分が思ってたのと違う味」だったり、大工さんが「自分が建てようと思ってたのと違う家」を建てちゃったら、それはお客さんに提供できませんから。
演じる人は基本的に、自分が演じている時に自分の姿を見ることができません。窯の中で焼いている陶器みたいなものです。ひび割れや釉薬の具合を途中でチェックすることはできません。窯の蓋を閉じ、強い火力で一気に焼き上げるわけです。だから窯に入れる前に、工夫とトライを繰り返し、経験を積み重ねて、思い通りの結果になるような準備しておかなければなりません。それを怠れば、思ったのとは全然違う器を量産することになります。
途中でチェックしながら調整しなくても、「自分がやろうとしていること」「自分が今やっているつもりのこと」を「実際にできる」「できている」身体を手に入れる必要があります。
一言で言えば「イメージ通りに動く身体」ですね。これはめちゃくちゃ大事です。
別に演じる人でなくても、部活とかのスポーツする人や現場なんかで働く人にとっても「イメージ通りに身体が動く」ことはとても大切で必要なことだし、もっと言えば、動物である以上アチコチ動き回ってアレコレやるわけなんで、全ての人の健康や安全にとっても必要な要素ではないかなと思います。
皆さんもよくご存知のように、この「イメージ通りに動く身体」を手に入れるために、プロの俳優さんや俳優の卵さん達は、様々なありとあらゆる努力を本日今この瞬間も積み重ね続けておるわけです。ちょっと羅列してみると
「ジャズダンス」「クラシックバレエ」「モダンバレエ」「モダンジャズ」「ヒップホップ」「タップダンス」「日本舞踊」「舞踏」「フラメンコ」なんかの芸術的定番から「ヨガ」「ピラティス」「座禅」なんかのスピリチュアル系、「エアロビクス」「自転車」「スイミング」「ボディビル」なんかのスポーツ系とか、「ピアノ」「サックス」「ボイストレーニング」等の音楽系、その他「絵画」や「書道」なんかの趣味系まで含めると、実になんというか、もうなんでもいいから身体を動かして、自分のイメージと現実の差を埋めていく作業を日々黙々と進めていくしかないわけです。
実際、これには時間がかかるし、自分の身体を動かして、観察して、トライを繰り返して、もっとカッコ良く、もっと美しく、もっと思い通りに、もっともっと・・・と求めていくしか方法は無いと思います。
また、役を演じるということは、様々な「職業」を演じるということでもあるので、上に挙げたような習い事系でなくても、仕事でも家事でも趣味でも、なんでもやって身体を動かし、経験しておくべきです。そして自分の動きをチェックして、うまくいかない部分を工夫し、調整して、うまくできるコツを掴んでおきましょう。要は「思い通りに」「狙い通りに」身体が動くということ。それが役になった時に「その職業の人に見える」ということに繋がってきます。
で、です。
そういう努力を積み重ねたとして、ついに「イメージ通りに」「思い通りに」動く身体を手に入れたとします。
それで終わりかというと、もちろんそんなことはなくて、まだ先があります。
それは「見映え」という点です。
別の言い方をすれば「華」「格」「品」「オーラ」「器」「雰囲気」などの言葉で言及されることのある、俳優の全身からユラユラ立ち上り滲み出る、アレです。
もちろん身体の動きだけで成り立つものではなく、精神面の揺るがなさ、広がり、集中と開放、透明度などがその始点として大きく関与はしていますが、最終的にそれらは身体を通して表現され、それが受け手に伝わるわけで、自由に、思い通りにイメージを表現し、具現化できる身体を持つことは絶対に必要になってきます。
演技をしない一般の人にとっても、やっぱり「かっこいい」方がいいし、「存在感」があったり、「華」があったりした方がいいですよね。
まあ、この辺は大変ですので、またいつか近いうちに詳しくお話ししたいと思います。
というわけで、とりあえず今日のところはこのくらいで。
次回からはいよいよ「精神的準備編」に入っていきますよ〜。