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セリフを正しく覚えよう!

演技の方法/訓練
この記事は約7分で読めます。

Hello world!nora3です。

いやあ。

ついに来ちゃいました。

わが家にも。

アレが。

今まで涙ぐましい自粛生活でなんとか凌いできたんですけどね。

隔離期間もひと頃に比べると短くなってるみたいなんですが、それでも突如一週間強の春休みとなってしまい・・・大きな声では言えませんが、はっきり言ってヒマしておりますデス。

ここのところ、話題の映画やヒョンビンさん!について演技的雑談を書いたりしてたんですが、思いがけず時間ができたので、ここらで「演技のメソッド」についてもボチボチ書き進めていこうかなと思っております。

 

 

「演技の準備の準備」として、まだ台本をもらう前、普段の日常の中で俳優はどんなことを心がけて過ごすべきか、役をもらった時に「良い準備」をするために「準備の準備」としてどんな訓練を積み重ねておくべきかについては、すでに一通り述べました。よね?

 

 

なのでここからは、台本を受け取って、役をもらった後の「演技の準備」について書いていきたいと思います。

 

おめでとうございます!

あなたオーディションに合格しましたよ!

はい、これが台本です!

あなたの役は、コレです!

あとはあなたにお任せします!

だってあなた俳優ですよね?

素晴らしい演技期待してます!

どぞよろしく!

 

さて。

こうしてあなたが新しい役を得たとして。

まずなにからやりますか?

 

まず、とりあえず台本を読んでみる?

これは、いいと思います。

自分の役だけでなく、台本全体を、なんの先入観も持たずに、数回黙読してみましょう。

声に出さない方がいいと思います。

いきなり変な色が付いてしまう可能性もあるので。

この段階で自分のセリフにマーカーを引いたりする人もいますが、お勧めしません。

台本への書き込みなどもまだしない方がいいです。

まっさらな状態の台本をゆっくりと読み、全体の流れを把握する程度で良いでしょう。

役に対してなんらかの先入観を持ったりセリフに色が付いたりするのを「避ける」ことに主眼を置いてください。

この初見の時点で色が付いてしまうと、それに自分で気づいて修正することが難しくなります。

新車をいきなり改造して乗り始めるようなもので、その車の素性や元々の乗り味や特性やいろんな事がわからなくなってしまいます。

 

では次に進みましょう。

次はなにをしますか?

セリフを覚える?

色も抑揚も付けずに「棒読み」で覚えるならそれでもいいんですが、その前にやっておいた方がいいことがあります。

 

①台本から、自分の役に関する「個人情報」をノートに抜き出します。

台本に書かれている自分の役の個人情報(例えば、職業、部署、特殊技能、経歴、趣味嗜好、住所、出身地、家族、生い立ち、過去の事件事故、etc etc)を「客観的」「事務的」に全て抜き出す。

「個人情報」のみでいいです。性格や欲望や夢や身体的特徴や心の傷や・・・役の「内面」や「個性」に影響を与えていると考えられるような事柄については、ここではまだ必要ありません。

キャラクターそのものに直接影響があるような事柄にここで注目してしまうと、役に色が付いてしまいますから、ここではまだ放っておきます。

 

②書き出した「個人情報」について、一通り知識を補完する。

ノートに抜き出した個人情報の中で、役が知っているはずなのに自分がよく知らない情報について調べ、知識レベルを役に近づけます。特に職業や特殊技能などの専門的な分野については知識が全然足りていない場合が多いので、どんな組織で、どんな業務内容で、どんなタイムスケジュールで動いてて、くらいは調べます。その他の事柄についても、全くわからないという事が無いように、知識の穴埋めをしておきます。

台本をもらってから、ここまでで2日くらいでしょうか。

 

はい。

これで一応「本読みをする準備」ができたので、ゆるゆると台本を読みセリフを覚えていきます。

色を付けず、抑揚を付けず、意味も目的も排除された「ただの文章」として、声に出して、ゆるゆると、です。

当たり前ですが、自分のセリフだけ覚えても使い物になりませんので、最低単位として映像の台本ならシーンごと、舞台の戯曲なら幕ごとに読みながら覚えます。自分の役以外は、声に出しても出さなくても構いませんが、相手のセリフに対する「思い込み」も極力排除した方がいいので、声は出さない方がいいかもしれません。

自分のセリフにも相手のセリフにも色が付いていないことを確認しながら、完全に覚えるまで続けるわけですが、この時に意識して点検して欲しいことがあります。

自分の喋っているセリフに「穴がないか」という事です。

先ほど、役の「個人情報」について一通り調べましょうと書きましたが、本読みをしているとそれだけでは足りない部分が必ず出てきます。「自分の喋っている言葉」に「裏打ち」が無いと感じる部分や、口が「言葉」を喋っているだけで頭に「具体的なイメージ」がなくて空っぽだと感じる部分を探し出して、その「穴」を埋めるように、さらに具体的な知識やイメージや映像を補完します。

そしてまた本読みをし、ゆるゆるとセリフを覚えつつ、さらに小さな穴も発見し、それを埋めて、埋ったらまた本を読んで・・・という作業を繰り返します。

人は記憶を「絵的」に覚えている場合が多いので、なるべく映像やイメージなどの情報で「穴埋め」するのが良いと思います。例えば、役が故郷の話をするシーンを読んでみて、自分の言葉の「裏」が「スカスカ」だと感じるなら、「故郷に向かう車窓の風景」「駅舎の佇まい」「駅から家までの道・風景」「実家・・・玄関・・・台所・・・自分の部屋」「家族・旧友の顔」など、その「穴が埋まるような」イメージなり映像なり情報なりを考えて準備します。

あくまでセリフには色を付けないままで、穴をどんどん埋め、セリフを覚えていきます。

穴が全部埋まったと感じ、セリフを全部覚えたら、この段階は終わりです。

「他人が書いたセリフ」が「自分の言葉(裏付けのある言葉)」になった、と一応言える状態まで来ました。

 

関連してちょっと雑談。

だいぶ昔ですが、「羊たちの沈黙」というジョディー・フォスターが主演した映画がありました。

この映画の中で、ジョディー・フォスター演じるクラリスというFBIの捜査官が、過去のトラウマについて独白する顔面ドアップ長回しのシーンがあったんですが、この時のジョディーの演技が、まさに「完全に穴が埋まった」演技だったと記憶しています。まるで自分が本当に経験したことのように、ジョディーは自分の中の「過去の映像・イメージ」を鮮明に見ながら語り続け、そういうことが彼女の中で起こっているということが、観ているこちらにもビンビン伝わってくる、という素晴らしいシーンでした。

ジョディーは結局この映画でアカデミー主演女優賞を獲得するわけですが、やるべきことに忠実に取り組んだ結果の受賞だったので、僕としては「良い演技」とはスーパーでアンビリーバブルなことでは全然なくて、基本に忠実にコツコツ積み上げた結果として到達できるものなんだと思うことができました。

彼女は言ってみれば「穴埋め職人」ですね。こんな風に呼ばれるのはジョディーはもちろん心外でしょうが。未見の方は是非一度、穴の埋め方を習うつもりで観ていただければと思いますね。

 

 ふぅ。

自分が長年やってきたやり方で、これが一番効率的で効果的でカンタン!と思ってるんですが、いかがでしょう?

「演技の準備」には「やってはいけないこと」と「守るべき順番」があるわけなんですけど、それ以外に「これが絶対正しい」みたいなやり方があるわけでもないので、いろいろ試行錯誤していただいて、自分に一番合ったやり方を見つけ出していただければ良いかなと思います。

 

さあ。

自分の言葉としてセリフを覚えたので、次回からはいよいよ一番面白い「役作り」に入っていきますよー!

本日ここまででござる!

 

「セリフ」+「穴埋め」=「自分の(裏付けのある)言葉」
「演技の準備」には「やってはいけないこと」と「守るべき順番」がある

DialogueDialogue

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